遺産分割協議上の放棄と相続放棄
相談に来られる方の中で、「遺産分割協議を相続人の間で行ったから、私は相続放棄していますよ」という方がいらっしゃいます。
お話を聞くと、「預金や不動産も一切受け取らない代わりに、借金も背負わない」という話を相続人間でまとめておりました。
遺産分割協議で「預金も不動産も受け取らないと決めました=相続放棄」と思われるかもしれませんが、厳密に言うとこれは相続放棄をしたことにはなりません。
遺産分割協議で「財産を一銭も受け取らない」と決めたことは、相続放棄でも同じ結果になりますが、実は、性格が全く異なります。
では何が変わってくるのかと言いますと、この状態で、「相続放棄が成立した」と思っていたとしても、亡くなった方の借金を返済しなければならないことになってしまう恐れがあるということです。
遺産分割協議とは、“どの財産を誰がどれだけ貰うか、借金はどうするか”を相続人の間で取り決めるだけのものですから、相続人以外の他人に主張することができません。
つまり、亡くなったひとにお金を貸していた銀行などは、遺産分割協議の内容など関係なく、相続人の誰に対しても、「亡くなった方の借金は相続人に払ってもらいます」と弁済を求めることができます。
銀行などの金融機関は貸し倒れのリスクを極端に嫌いますので、亡くなった人の借金は相続人全員に弁済請求をしてきます。
もちろん、相続人になっている以上、借金返済の義務が発生していますから、「遺産分割協議をしたから私は亡くなったひとの借金は払いません」と主張することができなくなります。
このように、遺産分割協議での「何も貰わない代わりに借金も背負わないこと」と家庭裁判所で行う「相続放棄」の手続きは、意味合いが変わってきます。
大事なので繰り返しますが、相続放棄は“家庭裁判所での手続き以外では相続放棄とならない”ことをよく覚えておいてください。
「私は別に財産はいらないわ」という方や、「跡を継ぐ人にすべて財産を渡せたらそれでいい」と思われるのでしたら、遺産分割協議をするよりも、カンタンに済ますことのできる相続放棄をされたほうが、後々面倒なことにも巻き込まれることもないので安心です。
もし、「こんなときはどうなるの?」など、「手続きがわからない」など、不安な方がいらっしゃいましたら、専門家である当事務所にすぐにご連絡ください。迅速に対応させていただくことをお約束します。